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イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.6 [石黒繭子さん 第2話]
2022.12.09

イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.6 [石黒繭子さん 第2話]

飯綱町のNPOに所属し自閉症や発達障害の子どもたちやその保護者をサポートする繭子さん。小学生時代から見てきた子どもたちが高校生になり卒業してゆく成長の様子、そして繭子さんのライフワークである女性サポートについて詳しく伺いました。Biotope紙面では紹介しきれなかったロングインタビュー、Web版として全3回に分けて公開です。

石黒繭子さん
名古屋市出身。社会福祉協議会でのボランティアコーディネーターや保育士を経験したのち、大学院に進学し自閉症や発達障害を専門に学ぶ。2011年からは飯綱町のNPO法人に勤め、障がい児が通う施設を立ち上げ運営。2021年に株式会社ククリテを設立し、ひとり親や脱養護する若者たちの居住支援も始める。 

第2話:『子どもを帰す場所はお母さん。だからお母さんを整えるのが重要

飯室(以下、飯):所属されているNPOではどんな活動をされているのでしょう。

繭子(以下:繭):介護保険にデイサービスや特養があるのと同じように、障がい福祉のなかでも法律で決められた施設がいくつかあって、その中のひとつの障がい児が通うデイサービスをやっている。乳幼児健診などでスクリーニングされた子どもたちのフォローをしたり、小中高校を回って先生や親が心配だと思った子どもたちの相談にのったりも。保育園や小学校などから来てくれればそれでいいけれど、アウトリーチ、つまり支援が必要にもかかわらず届いていない子どもたちに対して、こちらが積極的に働きかけて情報や支援を届けてゆくということも必要。

飯:なるほど。自分も来春から子どもが小学校に上がるのですが、子育てのなかで、書籍やインターネット、周りのお母さんとの会話などからそういう話を聞くことも増えてきました。実際、どんな子どもたちが来られるんでしょう。

繭:自閉症や発達障害に強いというのがウリだけれど、飯綱町、信濃町限定で活動しているのもあって、それ以外にも知的障がい、ダウン症などいろんな子がいる。教育とは言わずに療育というんだけれど、子どもたちが療育、つまり生きてゆくのに必要なことを訓練したり、学んだりしている。

飯:学校みたいに年齢別で活動するんでしょうか?

繭:小学生から高校生までが一緒に活動してる。例えば長野市みたいに何ヶ所かデイサービスの選択肢があれば高校生には高校生の場所があったりして分散すると思うけれど、ここは町でひとつしかないので、生きづらさを持った子はうちにくるしかない。つまりいろんな機能を持たせて、全員の居場所にしないといけない。

飯:全員の居場所、ですか。

繭:家族って、こういう家庭を作ろうって最初は思うかもしれないけれど、そんな思い描いていた通りにはならないじゃない? 例えば女の子が欲しかったけれど男の子が生まれてきた。結果、可愛らしいお部屋にするつもりだったけれど、ガンダムになっちゃった、とか(笑)。結局は構成されるひとで場は作られる。だからそのときそのとき出会ったひとで作ったのがこの場所。最初から目指していたかというと、そうではなかったと思う。

飯:10年以上従事しているということは、当たり前ですが、子どもたちもどんどん大きくなるわけですよね。

繭:たまたま良い伝統が生まれているんだけれど、うちに通い始めたときは中学生だった子がアルバイトをしてくれたことがあったの。その子はうちの初めての卒業生だったんだけれども、母子家庭で育っていて、お母さんも身体障がい者。大学に行きたいし、ひとり暮らしもしなきゃならないっていうのもあって、多少なりともお金を貯めるためにうちの手伝いをすることになって。でもアルバイトじゃない日も来るし、小さい子どもたちと鬼ごっこ、かくれんぼとかしてくれて。その子以来、高校生になったらうちでアルバイトをして下の子どもたちの面倒を見るっていうのが伝統、文化になっている。中学生は予備軍としてお手伝いしてくれて、高校生たちは重たいものを自然と持ったり、小さい子の相手をしたりして。そういう循環ができ始めていて、とっても助かる。

飯:そういうの、話聞くだけでも感動しますね。

繭:成長が嬉しい。来たばかりの頃は泣いて喚いていた子が同じく泣いて喚いている小さい子に「大丈夫?」って諭していたり、集団に入るのが大変だった子が小さい子の手を繋いで歩いていたりとか。本当に感動する、それだけで。

飯:親の立場で聞いてしまいます。

繭:そう、当然ながら通っている子どもたちのサポートが仕事なんだけれど、子どもって特殊ないきものでね、保護者っていう存在が必ずついてくる。その保護者の子育てのサポートも仕事に含まれる

飯:あぁ、そうか。保護者との絡みは必至ですね。

繭:それで、私が大事にしているのはもともと女性のサポート。お母さんという女性をサポートするのが自分の興味の主軸なの。

飯:お母さんのサポート、ですか。

繭:子どもを帰す場所はお母さんでしょ。だから子どもをなんとかするよりも、お母さんを整えるほうが重要。自閉症や発達障害の子どもたちは不登校や不適応を引き起こしやすいけれど、それに対してお母さんがちゃんと向き合えるようになると子どもはちゃんと成長する。逆にお母さんが焦ったり、「こうあるべき」「みんなと同じであるべき」なんて思っているうちは苦しくなっちゃう。

飯:繭子さんが女性のサポートに興味を持ったのはどうしてなんでしょう。

繭:大学ではおじいちゃんおばあちゃん同居していたから高齢者福祉を学びたいとか、障がい者が身近にいたから障がい者福祉の道に進みたいというような、何かしらの原体験を持っているひとが多かったんだけれど、私にはそういうのはなかったから実習先を選ぶのもすごく迷って。そのときに捻り出したのが自分が女性だったから、子育て支援。シングルマザーがいとこにいたっていうのもあるかな。もう、捻くり出した、って感じ。

飯:そうは言っても、その大学時代に捻くり出した答えが今もずっと繋がっていますね。

繭:大学を卒業してからたまたま保育士をやることになって、そのなかで自閉症、発達障害の子どもたちと出会った。30歳以降、次のキャリアを考えたときに、目の前に障がいを持った子たちがいるのにどうしていいのかわからない。それなら勉強してみようって思ったの。だから、私の場合は最初から障がい者福祉や障がい児に貢献したくて、なんていうのはサラサラなくて。ただ女性に、お母さんに興味があって…。

飯:ありがとうございます。次回は最終回。繭子さんのこれからのお話も聞かせていただこうと思います。

(続きます)

1166バックパッカーズ

飯室 織絵

兵庫県出身。2010年に長野市にてゲストハウス・1166バックパッカーズ開業。ガイドブックの情報ではものたりない旅人と地元のひとを緩やかに繋ぐパイプ役を目指す。日々旅人の話を聞かせてもらうなかで聞き・書きにも興味を持つ。

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