2021.09.07
kimono随想#3

呉服屋さんの若旦那と、ある取材先で、そうとは知らずに出会いました。
仲間たちと細い紙の筒の中に細かい粉を隙間なく詰める作業をしている彼の物腰はやわらかく、
指先はやさしく、こまやかでした。
他の仲間の多くが紙の筒をつぶさないために金属の筒の中に紙の筒を入れて詰めています。
また、粉をどこまで詰めたか見えないために粉を押し込む棒に目印をつけています。
彼はそのどちらも必要とせず、手の感覚で詰めていきます。
その手元に惹かれて目を離せずにいたところ、彼が呉服屋の若旦那だということがわかったのでした。
反物や着物を扱ってきた指先は、こんなふうなんだな、と思った日でした。
(つづく)
関連活動:オキモノ倶楽部