Shiorichair -シオリチェア
特別な場所じゃなくても、特別な時間を切り取れる
私は、大阪から長野に移住してきた。
だから、長野県のあちこちにいまだに観光気分で訪れるし、どこかに行くなら、存分に、そこのスポットを楽しみたい気持ちが満載。
もし遠方からスキーやスノボに訪れたなら、その日が多少の吹雪でも、「今しかないから!」と滑りに行くし、雨の中でも、森の小道をウォーキングするだろう。
私もどこかに旅行した時は、確かにその場所でのアクティビティを楽しむし、何もしてない時間をもったいないと感じる。
でも、長野に住んでみて分かったのは、地元の人は寒いからスキーなんてしないってこと(笑)。もし雨降りなら外での予定を延期したりと、その日の過ごし方を気軽に決められる。地元に住んでるなら、またいつでも行けばいい。
観光スポットに関して言えば、混雑する場所や時間に行く必要はない。ちょっとした時間で行けるから。
特別な場所じゃなくても、特別な時間を切り取れる。「そんな感じでいいんじゃないのー?!」とワタシは思っている。
だから、戸隠も同じ。
予定を1日に凝縮しなくても、肩の力を抜いて、もっとナチュラルに自然と仲良く過ごせる。そこには、心と時間のあそびがあるからこそ、意外なものを見つけられる余裕もある。
哲学のような時間
スマホが普及してから、「なにもしない」「ぼーっとする」時間はスマホに奪われてる気がしている。
ぼーっとしてみよう。
どこでも、椅子に座れば、急に特別なスポットになる。
もっと、「住んでる」からできること、楽しもう。
そんなにタイトに生きなくても、今ここにいる自分を感じられる。
葉っぱの色が昨日と違うことやら、早朝に道路をリスが横切ることとか、見過ごしてしまうのはもったいない。名称のない場所に座って、「いま」を感じることで、人生の中での大切なこととか、見逃してることに気づける、なんていう、ちょっと大袈裟で壮大で哲学のような時間を感じてる。
父の椅子
父は、庭先に置いた椅子にすわって、タバコを吸うのが日常だった。
そもそも、家の中は禁煙ということで、仕方なく外にあるデッキで喫煙をしていたのだが、雪の日は、わざわざ玄関で防寒装備をしてから、外の椅子に座っていた。
私も母も、「そんなにしてまでタバコが吸いたいのか〜」なんて笑っていたけど、もしかしたら、それは、”チェアリングのさきがけ” だったのかもしれない。
椅子に座って、小鳥のさえずりや、太陽の光や風、時には冷たい雪や雨を感じるのって、とても贅沢な時間だったのかもしれない。
今振り返ると、父の隣に椅子を置いて私も座ってみればよかった。
一緒に、庭から見える景色を、もっとシェアすればよかった。
タバコを吸うために、外の椅子に移動しているだけだ、とばかり、思っていたけど。
本人も、チェアリングしているなんて意識は、おそらくゼロだったかもしれないけど(笑)
父にとって玄関の椅子に座っている時間って、タバコを吸うというという目的を果たすためだけでなく、もしかしたら、団塊世代として過ごしてきた人生を振り返るような、そんな時間だったのかもしれない。
今日私は、戸隠で椅子に座ってみた。
そしたら、いつも椅子に座っていた父のことを、ふと思い出した。同じことをしてみたら、見える景色があるんだな・・・
アロマバンビーノ
清水 しおり
アロマバンビーノ代表/嗅覚反応分析士トレーナー。大阪府出身、1998年にIターンで長野市に移住し、そのまま結婚して永住に。子どもの喘息やアレルギーを機に、家庭でのケアのためにアロマテラピーを学び始める。ベビーレッスン運営や長野県カルチャーセンターでのアロマ講師を経て、現在、アロマテラピーや嗅覚反応分析を教えるスクールとしてオンライン講座も展開中。