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イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.0[滝澤愛さん第1話]
2021.01.04

イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.0[滝澤愛さん第1話]

長野市南県町の小さな書店「ch.books」の店内にてカフェを営む滝澤愛さん。地元長野で高校生活を送った後は埼玉の大学へ進学。社会人生活を含み計8年を首都圏で暮らし、20代後半で長野にUターンします。

歳を重ねることで見えてきた地元の良さも、お店で味わう日々の喜びも、女子ならではの尽きない悩みも、包み隠さずまるっとお話しいただきました。

Biotope紙面では紹介しきれなかったロングインタビュー、Web版として全3回に分けて公開です。

滝澤愛(たきざわ あい)
長野県出身。東京の化粧品会社、軽井沢町や長野市内のカフェ勤務を経て、2013年に書店 ch.books 内で ch.books CAFE をはじめる。手づくり市やライブなどへの出張カフェも。趣味は猫、動物園、牧場、野鳥観察、茶道。

小さい店だからこそできること

飯室:今日はよろしくお願いします。さっそく、ひとつお願いしたいんですが……いつもの愛ちゃんの席、座ってみてもいいですか?

滝澤愛(以下、愛):あぁ、どうぞどうぞ。

飯室:この、いつも愛ちゃんが見ている景色を……と。ほぅ、座るとこんな感じなんですね。

愛:外からはあんまり見えないと思うけれど、中からはよく見えるんだよね。どんな人が通っているかよくわかる。あそこ、ほら電柱あるでしょ? あの向こう側に穴があって、そこでスズメが子育てしてるの。今はいないかな。春か夏くらいにかけて、そこにいつも親鳥が餌を運んでいるのを見てた。

飯室:のどかですねー。店の前の道は、毎日同じ人が歩いていたりしますよね?

愛:そうだよね。同じ時間に同じ人が歩いてる。

飯室:そうやって、いつも歩いている人がふらっとお店に入ってこられることもあります?

愛:「あ、この方!とうとう!」みたいな、ね。今年の春先にも、お昼にスコーンとお茶を頼んでくれた方がいて、「あ、いつも朝歩いている方だな!」って。

飯室:それ、言うんですか?

愛:言わなかった……言えない!あと、毎日歩いていても入りにくいと思う人も多いみたいで、「何屋かわからない」って。「あれ、カフェって書いてあるけど、本屋じゃなかったっけ?」みたいな。
「オシャレすぎて入れない」なんて言われることもある。そんなことなくない?って思うけど(笑)。

飯室:本屋って万人に対して開かれていると思うんですよ。

愛:うんうん。

飯室:特に旅先で思いますが、喫茶店と本屋と……宿もそうですけど、なんかこう、よそ者が堂々と入れる場所じゃないですか?

愛:普段から本を読んでる人からしたら本屋さんは入りやすいかもしれないけれど、そうじゃないとこの待ち構えてる感じが「何か絶対買わなくちゃいけない!」みたいなプレッシャーを与えちゃってるのかな。

飯室:お店の空間が狭いからですかね?

愛:そうそう、大きな本屋さんの「ちょっと立ち読み」みたいなのがしづらいのかも。

飯室:大きい本屋だとお客さんが「その他大勢の中の一人」になれるけど、ここだと?

愛:一対一。

飯室:それは本屋でなくても言えそうですね。それこそカフェでも。

愛:私も洋服屋さんとかに行って話しかけられるのが苦手だから、基本的には自分もあんまり話しかけない。特に本を選ぶ方には、こちらからはお会計のときにちょっと話すくらいかな。でも急に「何かおすすめありますか」みたいに言われて「きたー!」って思うときもある。それがきっかけで話せたりもするけど。

飯室:干渉しすぎない絶妙なタイミングがここにはありますよね。それはきっと愛ちゃんが意識しているからなんでしょうね。

愛:ぐいぐい話しかけられるのが嫌な方もいるかもしれないって思う。でもその反面、お客さんの方から扉を開けて入ってきてくれたっていうのが安心感にもなったり。
なかでも何回も来てくれる方は、「嫌じゃなかったんだな」って思うと、だんだん私も心を開ける。今朝来てくれた方とはお互いすごい話したいっていうのがあったので、私も自分の椅子を持って、すごい近い距離で座っちゃって。そうやって「話す!」みたいな時もあるよね。

飯室:私は1166バックパッカーズで「移住よもやま話」といって、移住された方や移住に興味のある方とのおしゃべり会を定期的にやっているのすが、ここは移住された方も来られますか?

愛:「最近長野に引っ越して来たんですよ」っていう方と話す機会はけっこうあるな。そういう方たちは、本当によく話すんだよね。この町や暮らしに興味があるから向こうも聞きたいし、私も何か知っていて役に立つようなことがあれば……っていろいろ話す。

飯室:いつでも同じ人が店頭にいると徐々に緊張が薄れて心を開いちゃいますね。ここも「カフェに行きたい」、「本屋に行きたい」というモチベーションのお客さんも多いとは思うけれど、「愛ちゃんに会いたい」っていう方も多そうです。安心して話せる人のいるお店は、移住者にとっても重要ですね。

愛:いつもいっぱいお客さんがいる大きなお店とは違うところだよね。ここはお客さんお一人お一人に「よくぞ来てくれた!」という感じ。だから自分が知っていることは答えたいし、「来てよかった」「また来たい」って思ってもらえたらいいな。

飯室:大きなお店ではできない関係性が、ここでは生まれていますね。

(次回に続きます)

1166バックパッカーズ

飯室 織絵

兵庫県出身。2010年に長野市にてゲストハウス・1166バックパッカーズ開業。ガイドブックの情報ではものたりない旅人と地元のひとを緩やかに繋ぐパイプ役を目指す。日々旅人の話を聞かせてもらうなかで聞き・書きにも興味を持つ。

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