地域×行政

[レポート]長野県庁職員と「組織としてどのような方向に向かうのが良いのか」について立場を越えて対話してみた

行政の人たちと立場を越えてフラットに、でもゆるっと真面目に対話したいと始まったBiotopeザヤイカ。「それいいね!」と一緒に盛り上がってくれたのが、長野県庁の職員で発足された長野県組織風土改革プロジェクト「かえプロ(かえるプロジェクト)」の皆さん。今回「マチナカde勝手に組織マネジメント会議」と銘打って、『承認しあう環境(組織)をどう作る』をテーマに対話しまくってみました。さあ、そのガッツリ2時間の濃密な内容をサクッとライトにカラっとまとめてお届けします。

組織マネジメント力の向上や、社員・職員の能力が十分に発揮できる職場環境づくりとは

「その組織にいるのがあたりまえだから、スキルアップに関心がない人がいる」「異動のスパンの短さのせいで、自分の専門性を認識しずらい」「仕事と人のミスマッチがおきる」など県庁という環境が作り出している特性が、しょっぱなからズバズバ出てきました。しかしそれらは、企業・行政同様に抱える課題です。

組織力強化に向けた取り組みを考えた時に、職場での、働く人たちによる積極的な事務改善や、企画立案へ取り組む意識改革はとても重要です。しかし、どうすれば、仕事に対する「やる気」と「働きがい」を向上させることができるのか、いまの環境でどんな取り組みが推進できるのか、それを模索しつづけて、もう何年?な現実。そして、変わらない組織に諦めを感じて、やる気のある人が辞めていくのも世の常。

組織は違えども、それぞれのリアルを話し合うことで、見えてきたのは、いままでのような流出を食い止めるだけの、その場しのぎの対応では無意味であるということ。より一人ひとりの「働きがい」につながるような、キャリア形成の支援が必要であるということ。そして、その取り組みを本気で推進していかなければ、組織力の強化といった、職場の環境づくりは達成できないということでした。

個々の仕事に拘束されて連携できない、ザ・縦割りの圧力

さらに、キャリア形成の支援といった、個にフォーカスするだけではなく、そのオフィスの環境に視点を変えてみた時、そこにはまた違った課題が見えてきました。

一般的に「オフィス改革」と掲げても、そこにはマネジメント、事務分担の改善、コミュニケーションが取りやすい環境の整備など、さまざまな要因が顕在化しています。公務員の場合は、その特性や制約もありますが、そんな中でも、より効率的で協力的な職場を実現できることはあるはずです。

例えば、あなたの職場を考えたときに以下のどれかに当てはまるものはありますか?

□部下のフォローやマルチな仕事に対応できるような体制になっている
□事務分担の改善に取り組んでいる
□チームとしての協力体制を作れている
□情報共有の促進を図っている

組織として、同一業務を一つのセクションですることや、決まった人が担うことは業務を円滑に進めることができる利点もあります。しかし、問題は、そこに柔軟さが欠落して、部門間の連携が必要な場合でも、連携がとれる体制にないということです。いつの間にかそこに作り出されたローカルルールに縛られて、このルールのみに従った思考や行動を取って、それが自分たちの常識になってしまっているパターン。これが改革の阻害となっているのは言うまでもありません。

「この様式は使いにくいから、もっと効率的に変えましょうよ」と提案しても「昔からこの方法だから変えなくていい。あなたは業務のことを何もわかっていないのに口出ししないで」など。

過去の慣習や制約の重要性とはいかほどのものなのか?

テレワークが推奨されていても「上司がオフィスに行くから自分も行かないといけない雰囲気」とか。実際にはどこでも仕事はできるし、自宅や集中できる場所で働くことで、効率を上げたり家庭時間を確保したりできるはずです。

チームとしての「協力体制を築くこと」「情報共有を促進すること」は、一つの仕事に関わる、他のメンバーが内容を理解し、いつでもサポートできる環境を作り出すことができるのです。

組織が活性化していく方法を、立場を越えて探ってみた

チームとしての協力体制や、情報共有の促進など、組織が活性化していく中で、仲間との連帯感や業務量のバランスは重要な要素になってきます。さらに、それらを適切に構成していく上で、上層部のマネジメント、中間層のマネジメント、若手のマインドセットを考える必要があります。

上司として、部下に対する「マネジメント方法」や「考え方」を示すだけでなく、部下自身が自発的に動けるように育成することも重要です。

小さな「できなかったこと」を指摘するのではなく、上司として「大局的な視点」での働き方を見せることは、若手の働き方改革を進めるための良い手本となり、より目標を達成できるチームに構成されていくはずです。

県庁のみなさんと、この点について対話をしてみると、公務員と民間企業の働き方やルールには違いがありますが、社会人としての基本的な仕事のあり方は、やはり共通していると感じました。

公務員であっても、民間企業と同様に、効率的な働き方や柔軟性を持ちながら仕事を進めることが今後、さらに求められるべきです。

より現代的な公務員としての役割を果たすには

民間企業においても、異動や業務引き継ぎでは、情報の共有や円滑なコミュニケーションが重要です。その場合、地域や業務に詳しい先輩社員や経験豊富な上司がいる場合は、彼らの知識や経験を活用しながらスムーズな引き継ぎを行うことができます。

これは、県庁内でも同じことです。公務員として働く上での課題や問題点はありますが、より効率的な働き方やマネジメント手法を探求することは非常に重要です。県庁に在籍する、若手社員に対しても、公務員の枠に囚われず、柔軟な発想や働き方を教えるなど、より現代的な公務員としての役割を果たせるようサポートする必要があります。

民間企業でも県庁内でも、組織の中で変革を起こすことは容易ではありません。しかし、一人の意識や行動が少しずつ変化していけば、周囲に影響を与えることができるかもしれません。

かえぷろのみなさんのように、柔軟な発想や行動を持ちながら、より良い働き方や組織を実現するために、取り組みを続けてほしいのです。公務員のみなさんの「働きがい」やモチベーションが向上することは、必ずわたしたち県民の暮らしの豊かさに繋がります

●組織内の意識改革やマインドセットの変革が進むこと

●保守的な慣習や保身の文化から脱却すること

これらの変化を進めるためには時間がかかることでしょう。しかし、根気強く取り組み続けることで、組織全体の活性化や成長につなげることができるはずです。

既存の慣習や縦割りの文化に囚われずに、より柔軟なマインドセットを持ちながら業務に取り組むことで、公務員としての役割をより果たせると思います。

変化のきっかけは小さな取り組みから始めること

今回のザヤイカには、民間企業にこの春入社した、社会人3ヶ月目の人も参加してくれました。ついこの間まで大学生だったので、社会に対するギャップなど、会社の中で感じたことがあったかを聞いてみました。すると予想しなかった回答が…

本人いわく、「上司がすごく情緒が安定している。いつもすごく褒めてくれる。先輩も褒めてくれる。」と。そして「どうしてそんなに褒めてくれるんですか」と聞いてみたらしい。すると先輩や上司は「自分も同じように先輩や上司にしてもらってきたから」と答えたという。「だから、自分も後輩ができたら、絶対同じようにしてあげたいです、先輩や上司のようにしてあげたいです」と話してくれました。

なんなんだ、この会社は…私も入社させてほしい。と思わず言ってしまいました。いや、違う違う、私たちそこそこの大人は、こういう組織をどんどん増やしていく番なんだと、その時、ハッと気付かされました。

とにかく、この会社の素晴らしいところは、個々の成長スピードの違いを前提にできていること。ありがちだが、その人のレベルを越えた成果を求めて、結果的にポテンシャルを潰してしまう。そのようなことが、この会社の中では起こりにくいだろうなと感じました。

「組織マネジメント」なんて聞くと、ついうっかり「自分が人を育てよう」と思い込み、「指導」など、できもしないことに陥ってしまいます。その結果、部下か上司どちらかが潰れていた。これもまた、ありがちなパターンです。しかし、この会社の上司や先輩たちは、「成果を出すための環境」を用意する、ただ、そのことだけに徹していると感じました。チーム全体として目標が達成できていれば、その人の成長のスピードは別に問題ない、くらいの器の大きさです。

このような取り組みが県庁内で進められると、公務員のイメージや評価も変わり、より効率的で現代的な行政組織が実現する可能性が高まると考えます。

 組織全体の文化や体制改革といった大きなことが求められますが、その変化のきっかけは、このような、日常の寄り添いという、小さな取り組みから始めることができるはずです。

以上

ということで、次回もやります「Biotopeザヤイカ」

次回は、2023年8月18日(金)19:00スタート| テーマは『成果を出すための環境をどう作る』です

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BiotopeFounder

吉川 みのり

[調和性 / アレンジ / 分析思考]

兵庫県神戸市生まれ。システムベンダーにおいてカスタマーサクセスとして6年間勤務。2004年シソーラス株式会社の創業時より、企業の個人情報管理であるプライバシーマーク認証取得支援コンサルタントとして15年以上の経験を持つ。2019年春、長野市に移住。移住後は地域活性化、まちづくりに関わるコミュニケーターとして地域の人々、行政、学生など多様な人々と共に商店街活性・教育・中山間地域交流などのプロジェクトに携わる。長野の働く女性ともっと繋がりを広げたい、地域で活躍している女性を可視化していきたいとの思いでBiotopeを立ち上げる。

2020年秋:Biotope発足


【専門分野資格等】
▶︎コミュニティプラットフォーム構築/個人情報管理/Web運用/レポート作成/資料・マニュアル作成
▶︎プライバシーマークコンサルタント/ファイナンシャル・プランナー


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