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イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.3 [松嶌圭子さん 第1話]

雑貨やインテリアのことを考えるのが好きだった高校時代。長野市の実家を出て新潟の専門学校へ進学。そこで学んだことは雑貨屋だけで生きて行くのは難しいということ。人生のみちくさを食いながら長野市に戻った圭子さんが目指していた暮らしとは? 勤め人の傍ら、週末に「手作り布小物のお店 みちくさ研究所」を営む圭子さんに、ゆっくりじっくりと開業前を振り返ってもらいました。Biotope紙面では紹介しきれなかったロングインタビュー、Web版として全3回に分けて公開です。

松嶌圭子
長野市出身。平日は勤め人、その傍ら2018年7月に長野市岩石町にて、週末のみ開店する「手作り布小物のお店 みちくさ研究所」を開業し、自身の作品を取り扱う。シンプルなデザインのなかにかわいらしさの見え隠れした小物は女性のみならず男性にも定評。

第1話:『雇われていたら、満足できなかった』

飯室(以下、飯):圭子さん、今日はよろしくお願いします。

圭子(以下、圭):どんなことをお話したらいいかなぁって考えてたんですけど、何もまとまりませんでした。

飯:大丈夫です。圭子さんは長野市出身でしたよね。

圭:そうですね。高卒で県外に出たくって。親に反対されましたが、短大や専門学校など2年だったらOKというところになんとか落ち着いて。当時は雑貨が好きだったので、そういうことが学べる新潟の専門学校に進学しました。でも入学早々にそこで学んだのは、雑貨屋さんだけで生きてゆくのは難しいということ…。

飯:ようやく手にした一人暮らし、挫折でなければいいのですが…

圭:挫折とまではいかなかったです。それはそれでいいやって思えました。

飯:ホッとしました。

圭:一人暮らしも楽しいし、気の合う友だちもできたし、2年で帰るのがいやになったので、卒業したあとは長野に本社がある新潟の飲食店にアルバイトで入りました。両親には、いずれ社員になって長野に帰るよって伝えて。

飯:半ば強引な残留…計画的ですね。

圭:そこで5年くらい働いて、そのあと洋服のお直し屋さんで働き始めて、結局14年くらい新潟にいました。

飯:楽しかった新潟を離れて長野市に戻るわけですが、どんな理由だったのでしょう。

圭:お直し屋さんで働いていたときに、すごく尊敬している副店長がいたんです。その人は教えるのがすごくうまくて、その人から新しい技術を教わるのが楽しかった。でもその副店長が退職されたあとは、自分の技術を磨くよりも全体を見ないといけない立場になってしまったんです。

飯:同じ職場でも立場が変わると、仕事内容も変わりますね。

圭:会社自体は楽しかったんですが、ずっと続けるという気持ちではなくなっていましたね。

飯:しかしながら新潟で再就職ではなく、長野市に戻られる決断をしています。新潟自体にわくわくしなくなっていたんでしょうか。

圭:わくわくはしていました。でも、もともと自分で何かやりたいという気持ちがハタチくらいからあったんです。

飯:そのタイミングで自営業に転換しようと思ったわけですか。

圭:誰かに雇ってもらうのはある意味楽ですけれど、それだけでは満足できなかった。かと言って、自営業で自分の生活を成り立たせるのもできないと思っていました。このまま新潟にいても、ただただ時間が過ぎていってしまいそうだと思い、環境を変えるために地元に戻ることにしました。

飯:就職と自営業、どちらもすんなりとは受け入れられなかったんですね。

圭:このときは誰にも相談しなかったですね。家族にも来月帰るとだけ伝えて。ありがたいことに実家があるので、実家で暮らしながら、自分にとって満足できる “何か” を探そうと思いました。

飯:自分の欲求に正直です。地元に戻ってどんな生活でしたか?

圭:帰ってきたときは腐ってましたね(笑)。もともと人付き合いが得意ではないので自分から友だちに連絡をとったりもしなくて。本を読んだり、携帯で調べ物をしたり、美術館やちょっとしたイベントに行ったりして、1年くらい過ごしていました。

飯:そういう鬱々とした時間を過ごしている若い世代も多いと思います。圭子さんの視界はどうやって晴れていったのでしょう。

圭:うーん…自分で何かをやりたかった。でも明確に何をしたいというのもなかったんです。そんなとき、高校時代の同窓生に再会したんです。

飯:モチコちゃんですね。
*モチコちゃん( = 望月ひとみさんの愛称。長野市岩石町で 2016年12月に喫茶と古本のお店 大福屋をオープンし、同町でシェアハウスも営む。)

(続きます)

1166バックパッカーズ

飯室 織絵

兵庫県出身。2010年に長野市にてゲストハウス・1166バックパッカーズ開業。ガイドブックの情報ではものたりない旅人と地元のひとを緩やかに繋ぐパイプ役を目指す。日々旅人の話を聞かせてもらうなかで聞き・書きにも興味を持つ。

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