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イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.2
[柏崎美恵さん第1話]
2021.07.14

イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.2
[柏崎美恵さん第1話]

ひたすら勉強の学生時代、毎晩7時に鳴る電話、カメラとの出会い。実家を出たいというだけで偶然 扉を開けることになった薬学の世界で、美恵さんはどう一歩を踏み出すのでしょう。身体や漢方にまつわる様々な疑問や不安を、丁寧なカウンセリングで応えていってくれる なつめや店主の美恵さんに、ゆっくりじっくりとお話しをうかがいました。Biotope紙面では紹介しきれなかったロングインタビュー、Web版として全3回に分けて公開です。

柏崎美恵
長野市出身。薬剤師、国際中医師。製薬会社、薬局などの勤務を経て、2011年 長野市桜枝町にて漢方とハーブのお店 なつめやを開業。店舗でのカウンセリング・漢方の処方だけでなく、食養生を大切にし、薬膳を取り入れたメニューのプロデュースや薬膳講座も行う。

第1話:『薬学部に興味があったわけではない』

飯室(以下、飯):美恵さん、今日はよろしくお願いします。

美恵さん(以下、美):お声掛けいただきまして、ありがとうございます。

飯:さっそくですが、美恵さんは長野市生まれで、愛知の大学で薬学部に進まれたんですよね。

美:そうです。名城大学の薬学部です。

飯:遡る話ですが、小さいころから薬学に興味があったんでしょうか。

美:全くないですね、全く!

飯:おぉ…しかし大学進学時の選択肢として薬学部が出てくるというのは?

美:私、小さいころ書道をやっていたので、大学も書道で行きたいって思ったんです。でも親からすると、それってお金にならないし手に職つかないからダメって。親は弁護士!って言ってましたね。

飯:厳しいですね。

美:そう。うち、親が厳しかったんです。だからとにかく実家から出たかった。英文学部や医学部、理工学部だったら実家から通えるところに大学があるので、実家を出られないですよね。だから長野にない学部に進学しないといけない。加えて親が納得する学部。そこに受かるための準備が私の高校3年間のミッションだって中学卒業の段階でもう感じてましたね。それで愛知に親戚が住んでいるのもあって、その他の条件も重ねていったらちょうど名城大学の薬学部が出てきたっていうだけなんです。

飯:実際の学生生活はどうでしたか?

美:ひたすら勉強でした。実習やってレポート書いてテストやって、実習やってレポート書いてテストやって…というのをひたすら続けて、すごく忙しかった。しかも私、化学の先生になってもいいなぁと思って教職課程も受けていたんです。

飯:めっちゃ勉強している学生さんですね。

美:その当時大学が忙しくて時間的にアルバイトもあまりできなかったけど、英語が好きだったので、仕送りを切り詰めたり夏休みとか長期休みに塾講師やって、英会話教室に通うお金を捻出したりカナダへ短期留学もしました

飯:カナダはどんな生活でしたか?

美:トロント大学の短期英語コースに通って寮生活をしました。日本人はほとんどいない寮だったので、英語しか喋らない。そういう環境に身を置いたんですよね。それが良かった。

飯:なるほど。で、また短期留学から薬学部に戻ってくるわけですね。

美:そう、薬学部に戻って。でも、カナダ行ったのがきっかけで自分の思考とか物の見方がかなり変わった気がします。通ってた大学は、ブランド物たくさん持ってるお嬢さんが多い私立の学校だったんですが、私は一般家庭の人間なのでそういう人たちとは全く合わなかったし。そうなると薬学部に行ってる理由がバカバカしくなってきて、やっぱり大学辞めたいって言い始めましたね。

飯:カナダから帰ってきてからガラっと変わったんですね。

美:そうですね。もうこんなところにいてもしょうがないって。カナダで仲良くなった日本人の女の子が写真家を目指していたんです。それで、私もカメラっておもしろいな、ちょっとやってみようかなって思って。帰国してから一眼レフのカメラを買っていろいろ撮り始めて、私、カメラマンになる!みたいなことに言っちゃって(笑)

飯:結局、大学はどうしましたか

美:やっぱり、大学だけは出た方がいいって話になりましたね。

飯:ですよね…。

美:名古屋のちょっと変わったエリアがあって…なんて言えばいいんだろう、アパートとかを改装して…今ではよくあるのかもしれないんですけれど、そこでいろんな人がお店をやったりしていて。その中に名古屋の有名な雑誌で写真を撮ってるカメラマンがいたんですけど、その人にアシスタントに来なよって言ってもらって。薬剤師の国家試験は卒業してから受けるから(当時)、試験が終わってからアシスタントに入って、結局半年くらいいましたね。

飯:卒業して、定職につかずカメラマン…という流れ、厳しい親御さんは説得できたんですか?

美:いやいやいやいや〜。当時は携帯もない時代だったので、毎晩7時に家の電話が鳴るんですよ。それを取らないとダメ。これは大学のときからですね。

飯:固定電話だとごまかせないですね…。

美:夜7時に電話を取ってから出かける、みたいなことをやってたんですけど、やっぱり撮影っていろいろ押したり、カメラマンの繋がりって結構できるじゃないですか。でそれである日、個展の打ち上げに行ってて遅くなっちゃったんですよね。そういう時に限って親が何度も電話してきてて、最後には、これから迎えに行く!って。夜中に車飛ばして来て、もうお前はこんなことやってちゃだめだ!って無理やり連れ戻されました。拉致ですね(笑)

飯:ひえ〜〜〜

美:その当時、カメラマンのアシスタントをやりながら、雑貨屋さんでアルバイトもしていたんです。まぁ正直なところ、遊んでいるうちが花だけど、いつまでも遊んでいられないよなって思いもどこかにあったんですよね。

美恵さんのおすすめの1冊。『気の発見』五木寛之・望月勇 / 学研プラス

(続きます)

1166バックパッカーズ

飯室 織絵

兵庫県出身。2010年に長野市にてゲストハウス・1166バックパッカーズ開業。ガイドブックの情報ではものたりない旅人と地元のひとを緩やかに繋ぐパイプ役を目指す。日々旅人の話を聞かせてもらうなかで聞き・書きにも興味を持つ。

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