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イイムロがいくおしかけ職場探訪Vol.5 [原田麻里子さん 最終話]

海外から帰国したあとは縁の繋がるままに職場を転々としていた原田さん。地に足をつけた生活を求めて長野市に引っ越します。全てが理想通りにゆくわけではないなかで、どうすれば今に納得しながら生活できるんでしょう。鬼無里の魅力とともに、Biotope紙面では紹介しきれなかったロングインタビュー、Web版として全3回に分けて公開です。

原田麻里子
東京都出身。大学卒業後は環境系のNPO団体や議員秘書、NPO・NGOと企業を繋ぐコーディネーターとして働く。2017年に長野市に転居したあとは、フリーランスで鬼無里観光振興会の企画・広報、NPO法人まめってぇ鬼無里のイベント運営やSDGsの普及活動なども行う。

 
 

第3話:『地に足をつけた生活を求めて長野に』

飯室(以下、飯):この先の人生の想像がつかない、と思うくらいに20代は充実していたと伺いました。日本に戻られてからはどうされたんですか?

原:友人の紹介で、環境に関わる団体の事務局で仕事をしたり、議員秘書だった時の縁で政党事務局で働いたり。1年ごとに職場が変わってた。

飯:すごいフリーランサーですね…。

原:NPO(現・一般社団法人) Think the Earth* の立ち上げ期に事務局で働いたりもした。そこではフルタイムで3年働いたんだけれど、それまでそうやって腰を据えてやってこなかったので同じところに何年もいるってことができなくって…。

飯:またフリーランスに戻りたくなってしまった…?

原:そう。でも有難いことに理解ある組織で、籍は残したままでいいよと言ってもらえた。それでフリーランスでNPOやNGOと企業をつなぐコーディネートも始めたの。


飯:長野市にお仕事で初めて来られたのは確か2011年でしたよね。1166バックパッカーズに泊まってくださったのを覚えています。2011年というと、東日本大震災があった年でもあります。


原:そうだよね。当時は東日本大震災の復興ボランティアに行ったり、コーディネーターの仕事で各地に赴いて現場に立つNPOの人たちと出会ったりすることが多かった。それで、もともとしたかった地に足のついた生活をする決心がついていったの。

飯:なるほど。

原:もちろん何もない方がいいけど、東京で天災とかあった時に、東京の友人が身を寄せられる場になりたい、という思いもあった。あと災害や紛争などで海外からの輸入に影響が出た時、衣食住、特に食べ物を作っているというのは強いと思って、作物も作りたかった。

飯:長野市に仕事で通うことが増えてきて、2017年に長野市の中心市街地に引っ越し。長野市では理想の生活を送れていたのでしょうか。

原:うーん、行ってみたら仕事も田んぼもなんとかなるだろうって勝手に思っていたんだけれど、実際はそんなことなくて。多少思い描いてきた生活があったけれど、必ずしもうまくいくわけではなかった。そんななか、仕事で通っていた時にできた人脈にはとても助けられたね!

飯:全てが理想通りにゆくわけではないけれど、その状況をも受け入れている感じですね。

原:その人がどう生きたいかが大切だと思う。自分の生き方に納得しているか。

飯:原田さんは今の生き方に納得されているんでしょうか。

原:ときどきいやになったり、普通に就職しておけばよかったって思うこともあるよ。でも自分で決めてきたことだし、得てきた自由がたくさんある。いいにしても悪いにしても自分のせい。

飯:いいにしても悪いにしても自分のせい、ですか。

原:以前は縁を繋いでくれた人に恩義を感じて、その人のために時間の融通が効く仕事を選んだり、時間の使い方を合わせたりしてた。でもそれって、その人に責任を押し付けて、自分の逃げ道にしているんだなって思うようになった。


飯:観光振興会の仕事は広報が主なのですか?

原:パンフレットやウェブサイトをリニューアルしたり、SNSで発信したり、イベントの企画運営みたいなことかな。よそから来た人の方が土地を新鮮な目で見られるでしょ。だからよそ者だった私も、これに関しては鬼無里で貢献できたのかなって思う。登山にトレッキングや自然観察会、里山歩きなど、スタッフとして参加していても楽しいよ。

飯:生まれ育った人にとっては当たり前の景色かもしれませんが、よそ者にとってはひとつひとつが特別ですもんね。NPOまめってぇ鬼無里の活動にも地域外の方が参加できるイベントが多そうですね。

原:山を整備するボランティア、田んぼのオーナー、酒米づくりのオーナーなどを募ってる。首都圏から長野市に移住して田舎暮らしにわくわくしている人もいるし、一方で実家の裏山をなんとかしたいからってチェーンソーを学ぶ人もいる。

飯:今の仕事や生活に不満はないけれど、休みの日などに新しい挑戦がしたいなんて方にも良さそうですね。

原:そう言った意味では、鬼無里の話ではないけれど、国際協力NGOの活動を応援してみるなんてこともおすすめ。書き損じハガキや古着、CDを送って寄付にすることもできるし、海外の国際協力でも、私が関わっている食や栄養改善に特化した団体*や、子供や難民をテーマにしている団体、障害がある人を中心に支援している団体もあるし、橋などのインフラ、通信環境整備などをしている団体もあって、自分の興味や関心にあった支援ができる。

飯:なるほど。視野が広がります。

原:あと、おすすめは『ビッグイシュー』という雑誌。もともとは首都圏を中心にホームレスの人の ”働く場” を作るために発行・販売されてるんだけど、長野でも定期購読ができる。他の雑誌ではなかなか取り扱わない新しい視点を持たせてくれる記事が載っていておもしろい。海外の翻訳記事もある。

飯:長野で関われることもありそうですし、日常の生活に加えて、何か違うところにアンテナを伸ばすこともできますね。原田さん、今回はお話聞かせてくださり、ありがとうございました。


*鬼無里観光振興会 https://kinasa.jp

* NPO法人 まめってぇ鬼無里 https://mamettee.org/
* 国際協力NGO・ハンガー・フリー・ワールド  https://www.hungerfree.net/
* NPO Think the Earth https://www.thinktheearth.net/jp/*ビッグ・イシュー日本 https://www.bigissue.jp/

1166バックパッカーズ

飯室 織絵

兵庫県出身。2010年に長野市にてゲストハウス・1166バックパッカーズ開業。ガイドブックの情報ではものたりない旅人と地元のひとを緩やかに繋ぐパイプ役を目指す。日々旅人の話を聞かせてもらうなかで聞き・書きにも興味を持つ。

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