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日々、描いたり泣いたり笑ったり#5[ プロになるには東京に出るべきか?地方でアーティストをするということ 後編]

前編は、私が暮らす富山のご紹介で終わってしまいました。本題は、「じゃあ、そんな田舎でもプロとしてやっていけるの?」ってところでしたね。後編は核心に迫ろうと思います。

田舎でもプロとしてやっていけるのか?富山で暮らす私の場合

実は私、長年東京に憧れていたし、こんな田舎にいたらセンスが悪くなる!と思っていました(ごめんなさい笑)。私が19歳の頃。ほとんどを引きこもりで過ごしたのですが、東京に住んで画塾に在籍していた時期がありました。
心配した親が富山へ強制送還したのですが、その時の画塾の先生の言葉が長い間私の心に刺さったままだったのです。

「富山でどうするの?プロの道に繋がる展覧会はあるの?せっかくのその才能をどうするの?」と。

19歳のときのデッサン

確かにその頃は、インターネットもあるにはあったのですが、ケータイがカラーになるかならないかという時代で誰もがSNSをやっているような今とは全く違いました。絵の世界で花を咲かせたいのならば、絵の世界に精通した人が多くいる東京にいたほうが良い時代だったでしょう。私にしても、心の病をどうにか克服した暁には東京にまた戻るものだと思っていたのですが、なんだかんだと富山で暮らし、あっという間に20年ほどが経ちました。こんな時代が来るとは思いもせず過ごしてきましたが、今では新規コンタクトはほとんどがSNSを通してです。

国内はもちろんのこと、アメリカ・イタリア・スペイン…と国外からもお問い合わせをいただきます。相手は私が「東京人か」などということは全く気にしていません。

アートとは、「世界中で、あなただけが生み出せるもの」を求められることだからです。

そのことを考えれば、自分が暮らす土地は、自分のパフォーマンスが最大化される場所が良いでしょう。自然がたくさんある場所が好きであればそのような場所に、人が多く刺激的な環境が好きならば都会に、好きな人を追いかけ見知らぬ土地に…というのも良いかもしれません。どんな場所でも自分が思うままに描ける環境が1番だと思います。

そして大事なのは、自分の才能を信じ磨き発信し続けること。

時には多くの人が集まる大都市での大きな公募展にチャレンジすることも必要かもしれませんし、苦手な人付き合いもやらなければいけない場面もあるでしょう。「東京にいるから成功する」ということは、今の時代は関係ないと私は思いますが、継続し続けることと人と繋がることがなければ広がりはありません。自分の花がいつ開くのか、どんな出会いが転がっているかは誰にも分からないし、動かなければいつまで経ってもやって来るものではないからです。

自分にとって心地よい場所とは

アーティストをしていると「好きなことで仕事をしているラッキーな人」と思われがちですが、そんなことはないんです。これは私の場合ですが、苦しいことも多いですよ笑

ただ、アーティストを職業にしてからは以前より各段に自分らしさを取り戻した気がします。
子供の頃や会社員をしているときの私は、いつも「私の居場所はここではない」という感覚があって、常に本当の居場所を探していました。私にとっては、他人と過ごすことがストレスだったということと、何にも縛られず自分のペースで仕事をする方が自分に合っているようでした。アーティストとは、自分の感覚を「見える化」する職業ですから、自分自身が鈍感になっていると良い物が生まれてくることはありません。

自分がより心地よく過ごすことができる環境を結構真面目に問い詰めたときに、私にとって居心地が良い場所は、今のところ自然が豊かな生まれ育った富山県ということになっています。自分に自信のない頃は、「東京」に出れば何者かになれると思っていました。

だけど何かで埋めようとしても、いつまで経っても埋まらない不安は、自分が満たしてあげるしかありませんでした。そうすると、今置かれている場所が、実はなんでも揃っていると気付いたのです。

この先、ずっと富山にいるか、県外に出るか、はたまた国外に出るか?は運命に任せますが、どんな場所で暮らすことになっても、自分が自分の心の声を無視せずちゃんと聞いてあげること。
それができれば、自分にとって心地よい場所は案外簡単に見つかるものかもしれません。

海できれいな石を探すのが好きです

画家

関口 彩

画家。富山県出身在住。
会社員のかたわら絵画制作をはじめ、2017年より画業に専念する。 作品は、動植物や石など自然のものを独自の視点で切り取り、細やかな筆使いで描くのが特徴。 装画、パッケージなどのクライアントワークを手がける他、作品発表を各地で行う。

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