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日々、描いたり泣いたり笑ったり#4[ プロになるには東京に出るべきか?地方でアーティストをするということ 前編]

地方で展覧会をすると、「東京からいらっしゃったんですか?」と言われるお客さんが必ず一人はいて、アーティストって東京に住んでいると思われているんだなと思うことがよくあります。一昔前は、多くのアーティストが東京を目指したのかもしれませんが、では実際のところはどうなのか?田舎でアーティスト活動ってできるの?ってことを今回は書いてみようと思います。

富山県の田舎町でアーティストをしています

私が暮らすのは富山県魚津市という人口が4万人程の小さな田舎町。この土地で生まれ、県外引っ越しは何度か経験しましたが、人生のほとんどをこの土地で過ごしています。

魚津市は県東部では主要な市のひとつで、郊外型商業施設やロードサイドには全国民が知っている衣料品店や飲食店が並ぶ、割と何でも揃っている街です。

一方、海や山が人里に近く、思い立てばすぐにでも自然の中に行けるという場所でもあります。あるときには、お山に帰ることができなくなったクマが市役所付近にまで来てしまうほどに自然は豊か。

野山で摘んできた草花

趣味は?と聞かれれば、最近は「野山で花を摘むこと」と答える私にとっては、春夏は山菜採りや花摘み、浜では打ち上げられたワカメを拾い、秋は色づいた木の実を採ってきてはドライにして楽しむという生活を気に入っています。

あ、冬?そうそう、気になる雪ですね。最近は温暖化で降らない年が多くなりましたが、今年はひどかったですね。除雪をしても追いつかず、平地でも最大積雪が2メートルにもなる歴史的な大豪雪の年となりました。

でも雪国っ子たちは、真っ白に覆い尽くされた白銀の光景を実はとても愛しています。雪に適応する能力は必須になりますが、四季折々の美しい自然の景色は、私の感性を豊かにしてくれるようです。それが絵に出てきているのでしょうから、私にとっては、この土地が作品作りに欠かせない宝箱なのです。

富山の雪と山

ちなみに、東京の人に「富山県在住です」と言うと、「えっ!遠いですね!」と孤島に住むかのように言われることが多いですが、東京まで北陸新幹線で2時間半というのは、東京から大阪へ行くような距離と変わりませんから、大都市へのアクセスは比較的便利。

展示会の際は、作品は郵送し、人間は新幹線でラクラク移動です。

画材の調達はどうしてる?

アーティストにとって大事な仕入れの部分、画材の購入についてですが、私はもっぱら通販を頼っています。急に絵の具が足りなくなった!という場合でも、私の使っている絵の具は割とポピュラーなものなので、歩いて5分の書店のホビーコーナーで調達できます。本格的な画材や額装となると、大きな画材・額屋さんは県庁所在地の富山市まで出なければいけないのですが、車で45分という距離はさほど苦ではないし、毎日通うわけではないので特に今まで不便に思ったことはありません。ちなみに電車は1時間に2本程度だし、荷物が大きくなる場合が多いので、画材調達の際は利用しません。

商売道具の一部

ただし、これは私の場合で、例えば京都のように日本画に特化した専門店ゆえに豊富に画材が手に入るとか、自分にピッタリの運命のフレーマー(額装師)に出会える確率だとかは、そりゃ都会には敵わないだろうなとは思います。

さあ、ここまでは私が暮らす富山県のご紹介になってしまいましたが、次回は「田舎でもプロとしてやっていけるのか?」という核心に迫ります。

20代の頃まではやっていけないと思っていた私が、どう変化してこの土地を選び今に至るのか。

次回もぜひお楽しみに。

画家

関口 彩

画家。富山県出身在住。
会社員のかたわら絵画制作をはじめ、2017年より画業に専念する。 作品は、動植物や石など自然のものを独自の視点で切り取り、細やかな筆使いで描くのが特徴。 装画、パッケージなどのクライアントワークを手がける他、作品発表を各地で行う。

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