ナガノ

Shiorichair -シオリチェア

初めて入ったカフェでも、椅子に腰掛ければそこは私の居場所になる。

「今日はここでランチをするぞ!」と思ったお店が大行列だったり休業日だったりで急遽お店を変更……なんて時でも、席にさえつけば、まるで前から私のために用意されていた椅子に腰掛けた気持ちになれる。
ランチを食べる間のほんの数分でも、自分のための椅子があるってホッとできるし、「ここにいて良いんだ」という気持ちになれる。

子どもたちが県外に暮らすようになり、いろんなことを見直す機会が増えた。
そんな中で、私のこれからの居場所についても思いを巡らせるようになった。

家の中での私の役割はかなり変化し、自分に使える時間も増えた。

「これから先の自分の役割や居場所は何なのか?」を考えると、すこし心に隙間を感じる。

そもそも、なぜ長野に来たんだっけ。

私がこの地にいる意味とは?

なんていう、またもや哲学的な思考にたどり着く。

長い歴史から見ると、ほんの一瞬の私の人生……
ありがちなフレーズだけど、博物館に行くとその言葉の深さを体感できる。

たとえば、かつて大草原で暮らしていたキリンの骨。今は博物館の一角に転がっているから、彼(彼女?)にとっては博物館が居場所なのだ。
(「触ってもいいけど元に戻してね」という骨の説明は、よく考えるととってもシュールに感じた)

平日の昼、人もまばらな博物館には、もともと地球のあちこちで生活していた生きもの達が集まっていて、私の周りはとっても静かで賑やかだった。

その博物館は小学校だった建物を利用しているため、母校ではなくても、懐かしさに包み込まれた。タイルの貼られた和式トイレなんて、もう何年ぶりだろうか。剥製や標本にまで、妙な親しみを感じてしまう。

束の間のタイムスリップから戻ってきて、我に返る。
多分、自分の居場所について考えること自体にそんなに意味はない。何かしら意味を見い出せば、隙間が少し埋まるような気がしているだけ。

きっといまはどのお店も満席で、空いている自分のための椅子を探し、彷徨っているようなもの。

いや、少しちがう。

「私の入りたいお店はどこにあるのか」を探しているという方が近いかな。きっと新しいお店には新たな時間を過ごせる椅子があるし、何度も行ってる場所にはいつもの居心地の良さがある。

今のままでも、それなりに居心地の良さを感じている。だけど、年齢や時間と共に変化している自分。だんだん違う場所を探したくなる気持ちが芽生えてきた。

今の私、そしてこれからの私が、もっとしっくりときて心がほどける椅子に、また出会える気がする。

冬が終わるまで、もう少し。
「私の椅子」を見つける散歩は続く。

アロマバンビーノ

清水 しおり

アロマバンビーノ代表/嗅覚反応分析士トレーナー。大阪府出身、1998年にIターンで長野市に移住し、そのまま結婚して永住に。子どもの喘息やアレルギーを機に、家庭でのケアのためにアロマテラピーを学び始める。ベビーレッスン運営や長野県カルチャーセンターでのアロマ講師を経て、現在、アロマテラピーや嗅覚反応分析を教えるスクールとしてオンライン講座も展開中。

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