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イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.0[滝澤愛さん第2話]

長野市南県町の小さな書店「ch.books」の店内にてカフェを営む滝澤愛さん。地元長野で高校生活を送った後は埼玉の大学へ進学。社会人生活を含み計8年を首都圏で暮らし、20代後半で長野にUターンします。

歳を重ねることで見えてきた地元の良さも、お店で味わう日々の喜びも、女子ならではの尽きない悩みも、包み隠さずまるっとお話しいただきました。

Biotope紙面では紹介しきれなかったロングインタビュー、Web版として全3回に分けて公開です。

額は少なくても、好きなことでお金をもらいたい

飯室:カフェに、「仕事疲れたし、辞めて長野引っ越しちゃおうかな」なんて方がお茶飲みに来られたら、どう答えます?


愛:そうだね……「住むにはいいですよ」って言うかな。年々、良さがわかってきた。


飯室:と言うことは、学生のころは「いいところ」とは思ってなかったですか?


愛:高校生で進路を決めるとき、長野を出ることが一番の目的だったの。嫌だったんだよね、この田舎感が。「とりあえず早く出たい。出られるんだったら大学じゃなくてもいい!」って。あと早く親元を離れてみたいっていうのもあったのかな。新鮮な野菜だってあるのが当たり前だったし、長野のフルーツの豊富さだって、カフェで自分でドリンクを作るまで気づいてなかった。

飯室:一度長野を出たからこそ、地元の良さがわかったのかもしれませんね。ちょっと突っ込んでみると、”住むにはいいところ” ってことでしたが、人間関係なんかはどうでしょう?


愛:長野では……そうね、窮屈なこともある。横のつながりがありすぎて、近すぎて。それは今もずっと感じているんだけど、でも助けにもなってくれている。今周りにいる人たちって長野に帰ってきてからできた友達が断然多いんだよね。そのつながりで今いろんなことができてる。東京のときは同期はいたけど、仕事も大変だったし、住んでる場所もバラバラで遠かったから休みの日まで会ったりはしなかったし。


飯室:なるほど。仕事の面ではどうでしょう?


愛:うーん、長野に戻って仕事の面では不安ばかりだけれど、それでも我慢して働きながら安定したお金をもらうより、額は少なくても好きなことでお金をもらえる方がいいな。


飯室:それは東京での社会人経験が影響してます?


愛:大学卒業してからは東京で通販の化粧品会社に就職したの。土日は休みだったし、有給もしっかり使えたんだけれど、平日の残業が多くてハードだった。会員さん向けの冊子を発行していて、その編集部にいたんだけれど、3号分くらい同時進行するからいつも追われていて。通勤も時間がかかるしあまりご飯を作ったりもできなくなって。休みの日にカフェに行くことが癒しだったけどそれすらできなくなって。このままだと本当にダメになっちゃうなって思った。


飯室:その会社では4年勤めて辞めるわけですが、東京に残って新しく仕事を見つけようとは思わなかったんですか?

愛:20代って今から思うと何でもできると思うの。だから好きなカフェで働くっていうのもできたと思うけれど、その時は「東京で一人で暮らしていくには正社員じゃなきゃ」って思っていて。学生のときに飲食店でのアルバイト経験はあるけど「カフェに就職して正社員として働いていける?」って思ったら自信がなくて。


飯室:なるほど。それで一旦地元に戻ってきたんですね。そのタイミングで hiyori CAFE(*1)での仕事が始まるんですか?
(*1 当時は長野市の出版社・まちなみカントリープレスが運営。同社はフリーペーパー『日和』にてグルメやファッションはもちろん、音楽やイベント情報まで、ユースカルチャーを発信していた。)


愛:長野に帰ってきたはいいけど、その頃は今と違って、一人でもゆったり過ごせて、フードもドリンクもちゃんとおいしいカフェっていうのは長野にはほとんどなかったと思う。でもそのうち hiyori CAFEがオープンするって話があって、応募したらアルバイトだったけど入れて。いろんなことやっている会社だから、私もいろんな経験ができた。「ライブをする会場を探しています」って方が急に来て場所を貸すことになったり、展示販売の話が決まったり。何より人脈ができたし、オープニングスタッフとしてここで働けたのは大きかった。でも自分の理想の働き方とは違うなっていうのもあって。自分がお酒を飲まないから出すのが苦手だったし、「ずっとアルバイトでいいの?」って思ったりもして。


飯室:「自分でカフェをオープンするぞ!」とはならなかったんですか?


愛:あったの。hiyori CAFEを辞めて、いくつかのカフェで働いてから。その時は私には珍しくがーっと動いた。物件も見つけて、見積もりとって。でも……


飯室:でも?


愛:見積もりをとったら思った以上に改装費がかかるし、「これ維持できるのかな?」って不安になって。それを hiyori CAFE時代の同僚に相談したんだよね。そう、先に辞めてチャンネルブックスを始めた二人。そしたら、「ここで朝カフェやってみたら?」って言ってくれて。それで朝ここに来て、人通りの多い時間とか、人の流れとかを調べたの。

飯室:調査ですね。


愛:うん。それで、人通りが多い朝7:30からにしようかなって。(*2020年11月より平日は8:30〜、土日祝は11:00〜)


飯室:2013年、もうけっこう前の話ですね。


愛:そうねー。


飯室:そのときは「試しにちょっとやろうかな」くらいでした?


愛:そうそう。1ヶ月くらいやってみようか、くらいの感じで。でもやってみたら、ほとんどお金もかけずに始めることができて。喫茶の営業許可はあったし、二人がコーヒーマシンも買ってくれたし(笑)。


(続きます)

1166バックパッカーズ

飯室 織絵

兵庫県出身。2010年に長野市にてゲストハウス・1166バックパッカーズ開業。ガイドブックの情報ではものたりない旅人と地元のひとを緩やかに繋ぐパイプ役を目指す。日々旅人の話を聞かせてもらうなかで聞き・書きにも興味を持つ。

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