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イイムロがいく おしかけ職場探訪Vol.11[矢野叶羽さん 第1話]

高校生のときに地元のゲストハウスやシェアハウスに集まる大人たちに影響を受け、場作りに興味を持ち始めた叶羽さん。大学在学中に「まなび対話コーディネーター」としてまちの大人と若者をつなげる仕事も始めました。Web版1話目は、高校生までを過ごした函館、そして長野での学生生活について伺いました。Biotope紙面では紹介しきれなかったロングインタビュー、Web版として全3回の1話目の公開です。

矢野 叶羽(やの かなう)さん

北海道函館市出身。2021年4月、長野県立大学グローバルマネジメント学部入学を機に初めて長野市へ。大学4年生の春からは同大学の先輩が起業した合同会社キキに在籍。学校や地域の枠組みを越えて長野市へ学習にくる高校、大学生の現地コーディネートを行う。インタビュー時に執筆中だった卒論のテーマは『コミュニティの対話と知識創造』。今もこの先も好きで興味を持ち続けそうなのは「まち」と「対話」。

第1話:何かが始まりそうでその未知にワクワクした長野進学

飯室(以下、飯):叶羽さん、今日はよろしくお願いします。

叶羽(以下、叶):よろしくお願いします。

飯:叶羽さんは長野県立大学グローバルマネジメント学部の4年生ですね(インタビュー時、2025年1月現在)。

叶:はい、この春(2025年3月)に卒業です。

飯:叶羽さんは、現役の大学生でありながら大学の先輩が起業した会社に所属し、学生とまちを繋げる「まなび対話コーディネーター」という仕事もしている。その辺りに興味があり、今回お声かけさせてもらいました。
叶:そうですね、ひとから頼み事みたいなのも受けたりして、今いろいろやっています。

飯:それにしても叶羽さんは笑顔がすてきで、いつもみんなの中に自然に溶け込んでゆく感じがします。それゆえ何か相談したり、お願いしたりしやすい雰囲気と言いますか…その親しみやすさはどこからきているんでしょう。

叶:ありがとうございます。そうですね、親がすごく社交的で小さい頃からいろんなところへ連れていってもらいました。親の友だちと会う機会も多かったですね。それで私も外向的になっていったんだと思います。

飯:叶羽さんは北海道函館市出身でしたよね。幼少期はどんなお子さんだったんでしょう。

叶:保育園の頃はボール遊びや体操など身体を動かすのも楽しみだったのを覚えています。あと、かるたやマンガが好きで文字を覚えるのも早かったみたいです。中学の頃に英語が好きになって、国際的なことにも関心を持つようになりました。それで高校になった頃にはもっと英語を話してみたいと思って、地元のゲストハウスやシェアハウスにも顔を出しはじめたんです。

飯:高校1年生でそういうところに顔を出すのは行動力がありますよね。通ってみてどんなことに気が付きましたか?

叶:自分たちの意思で函館に来たひとたちに多く出会ったんですが、それがとっても新鮮でした。そういうひとたちは私にとっては当たり前の海や山を見て「いいね」って言うんです。私からしたら「いやいや、いつもあるじゃん、普通じゃん」って思っていたのに。それが、自分の当たり前を大切にしようと思うきっかけになりました。

飯:そのゲストハウスやシェアハウスを運営していたひとたちは、当時の叶羽さんとそんなに年が違わなかったんじゃないですか?

叶:そうなんです。当時の自分より少しだけ年上の大学生でした。そんなひとたちが函館で小さく場所を始めて、周りの大人もそれをおもしろがって集まってくるのがすごくおもしろくて。私も他校の友だちと学生団体を立ち上げて地域イベントに出店したり、学外で場所を借りてイベントを開いたりするようになっていたので、自分でもこんな場所を作れたらいいなって思うようになっていきました。

飯:一般的な高校生は、家庭や学校、塾での人間関係が主になってくると思うんですが、叶羽さんは観光客、大学生、地域の大人たち、移住者などいろんな大人と顔を合わせるようになっていったんですね。そして、お客さんとしてではなく自分が場を提供することに興味がどんどん移行していった。

叶:そう、それで、高校の先生からはマネジメントや経営を学ぶなら小樽商科大学がいいよって勧められたり、国際系に興味があるから秋田の国際教養大学がいいのかなとか思ったり、偏差値では弘前大学かなとか考えたりしていて。

飯:そんななかでどうして長野県立大学が候補に上がってきたんでしょう?

叶:国際系の大学で検索していたら長野県立大学が出てきたんです。調べてみたら1年生のときに寮に入るし、海外研修が必須というのにも、なんだかワクワクしました。

飯:そのワクワクした感じ、もう少し詳しく聞きたいです。

叶:うーん、何かが始まりそうだけど、何かわからない。その未知な感じにワクワクしたんです。

飯:知らないからこそ、ワクワクした?

叶:地元には先輩も友だちも多いから自分も数年後こうなるんだろうなって想像ができたけれど、長野には知り合いが誰もいない。私は長野に行ったらいったいどうなるんだろうって。そんな想像できない4年間にワクワクしたんです。知らない出会いや、まだ知らない出来事がたくさん起こりそう、という感じ。

飯:なるほど。それで、いざ長野に住むことになったのがちょうどコロナ禍の真っ只中だったと思います。どんな滑り出しでしたか?


叶:大学は1年次全寮制を謳っているけれど、コロナ禍で寮には入れずに一人暮らしでした。でもキキを創業した先輩とも入学して1週間くらいで出会えたし、オンラインの新歓ではCSI*の方から話を聞く機会があって。私はとにかく地域活動を何かやりたいと思っていたので、その後もたくさん話を聞いてもらいました。

*CSI = 大学と地域を繋ぎ、地域課題の解決や学生が地域に飛び込む活動や起業支援などを担う「ソーシャル・イノベーション創出センター(CSI)」

飯:本来であれば、寮生活や学校を通して様々な情報に触れたり、先輩や友だちとの雑談から知らない情報が入ってきたりすると思ういますが、コロナ禍では自分から積極的に獲得しにいかなければ情報が得られないという状況でしたよね。それでもこうして、自分のやりたいことを明確にして、その後の人生につながるようなひとと関係性を築けていけたのは、叶羽さんの人柄なんでしょうね。次回のインタビューではその先輩が創業したキキとの関わり方を伺っていこうと思います。

(続きます)

1166バックパッカーズ

飯室 織絵

兵庫県出身。2010年に長野市にてゲストハウス・1166バックパッカーズ開業。ガイドブックの情報ではものたりない旅人と地元のひとを緩やかに繋ぐパイプ役を目指す。日々旅人の話を聞かせてもらうなかで聞き・書きにも興味を持つ。

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