Work Style VISION 2024 ― 開催レポート(実践講座編)
互いの認識のズレを解決できる「対話力」
2024年12月7日 に開催した、Work Style VISION-DAY3のセッションで、参加者の皆さんと一緒に考えた、コミュニケーションのクセと対話力について。その一部をここにご紹介します。
自分の対話力をアップするには?
違いの認識のズレを解決できる対話力。
人と人とのズレを認識するには、まず自分の認識のズレを理解すること、自分との対話力を上げることが大切です。自分のことを理解できるからこそ、人のことを理解することができるようになります。ここでは、自分の思考の癖を理解できるようになるための方法をお伝えしたいと思います。
なぜ「こんなはずでは。。」というコミュニケーションが生まれるのか
悩んでいることの例で考えてみる
例えば、今ご自身が気になっていること、悩んでいることを思い浮かべてみてください。ここでは例として、「上司に提案しても話を聞いてもらえず、結局ダメ出しばかりになる」というお困りごとを取り上げてみたいと思います。これって、どちらに問題があるのでしょう?
相手の問題「ちゃんと話を聞こうとしてくれない上司に問題がある」
自分の問題「うまくできない、伝えられない自分に問題がある」

他責と自責、どちらが良いの?
他人や周囲の環境に、ものごとの原因や理由があるとする考え方を「他責思考」
自分自身に、ものごとの原因や理由があるとする考え方を「自責思考」
と呼びます。
ビジネスの場などでは、「自責思考」が良い、と言われることもあるのですが、一概にそうともいえません。それぞれにメリットとデメリットがあります。他責思考のデメリットは「状況を改善できない、成長できない」こと。一方で、一歩距離をおいて、自分の性質と失敗の原因を分けて考えやすいので物事を客観的に分析しやすくなることはメリットです。自責思考のデメリットは、自分のせい、という考えに陥りやすいので「ストレスを感じやすいこと」。さらに自分を攻めすぎるとパフォーマンスの低下にもつながります、一方で、当社意識を持てる点はメリットです。大切なのは、バランスを持って、物事を中立にみること。

健全な思考を持つにはどうしたらいいのか?
健全な思考を持つには、自分自身と起きていることを分けて考えることです。
原因は、自分自身や自分の性格にあるのではなく、自分の行動にあったと考えること。そして、変えられるところは改善し、変えられないところは受け入れること。具体的には…
自分自身ではなく、行動を見直すこと
・「私が悪い」のではなく、「私が変えられるとしたらどこか」
・例えば、仕事や組織の仕組みなど、そもそも仕事の順番や構造に問題があるのではないかと目を向ける
・自分を責めるのではなく、原因を解明する
コントロールできるところとできないところを分けること
・自分が変えられる範囲に集中し、そうでないところは受け入れる
・例えば、上司に今まで言っていなかった気持ちを伝えて変化がなくでも、その反応には責任はない。行動できた自分を認める
・やってみることで、さらに方法を工夫するか、方法を変えるなど対応が変えられる
でも、それでも、いつも起きてしまうパターンってありませんか?行動を変えようと思っているんだけど、ついつい同じことを繰り返してしまう。もしくはわかっているけれど、できない、など。
例えば上の例でいうと、上司に気持ちを伝えてみれば、状況は変わるかもしれない。でもどうしても、怖くていえない。ここは、考え方を変えるだけでは、なんとかならない領域なのかもしれません。
潜在意識と顕在意識

みなさんは潜在意識、顕在意識という言葉を聞いたことがありますか?
この、考え方ではなんとかならない領域を「潜在意識」と呼んだりします。
潜在意識とは自分で意識できる領域で、判断や意思決定などを行う時に使われます。潜在意識とは自分では意識できない領域で、思考パターン、感情、イメージ、あらゆる記憶、身体的反応・生命維持などを司っている領域です。
普段意識できるのは、顕在意識のみですが、これは全体の5-10%といわれており、残りは潜在意識。現実に知らず知らずの内に大きな影響を与えているのは、こちらの意識です。私たちの思考は、ほぼ自動反応によって起きているとも言えるのです。
考え方の癖はどのようにできるの?

では、この潜在意識、考え方の癖はどのようにできるのでしょうか?これはほとんどの場合、小さい頃の親との関係性の中でできています。例えば先ほどの例、「上司に提案しても話を聞いてもらえず、結局ダメ出しばかりになる」で考えてみましょう。この場合、もしかしたら、子供の頃にも「言い分を聞いてもらえず頭ごなしにしかられる。どうせ伝わらないと諦めていた」という体験があったのかもしれません。このような出来事があると、自分の話はわかってもらえないのだ、という思考の癖が出来上がっていきます。すると、大人の今ではきちんと説明すれば伝わるかもしれないという状況でも、最初から諦めてしまう、という癖に落ちいてしまったりするのです。
考え方の癖に気づいてみよう
では、この考え方の癖をどうやって取り扱えば良いのでしょうか?
最初の一歩は、気づくことです。これは自分の癖なのではないか?と気づくことで、そこからの行動を変えるきっかけにすることができます。例えば、「私は子供の頃からの癖で、どうせ聞いてもらえないと決めつけているけれど、大人の今は違うかもしれない」と気づくだけでも、変化を作るきっかけになるということです。では癖に気づくにはどうすれば良いのか?というと、一つの方法は自分の考えを客観的にみてみることです、少しワークを試してみましょう。
自分の中で「当然そうだろう」と思っていることを、書き出してみてください。
例えば以下のようなことです。
A. できない、してはいけない と思っていること
例)本当の気持ちを言ってはいけない、上司に反対することなんてできない
B. しなきゃいけない、辛くてもやめられない、と思っていること
例)人とは仲良くしないといけない、頼まれた仕事は断れない
C. (人に)許せない! こうするべき!と思っていること
例)ルールを守らないのは許せない! 人の話はきちんと聞くべき
D. 自分はこう言う人間だ!と思っていること
例)私はダメな人間だ
自分のパターンを理解してあげる
自分の思考の癖を見つけたら、なぜそのような癖ができたのか、思い出してみましょう。そして、以下のようにして、理解しようとします。
①自分のパターンに気づく(理解)
子供の頃、親に庇護してもらわなければいけない立場での、生存のための戦略だったのだなと、わかってあげる
②子供の頃の自分に共感を寄せる(共感)
小さな子供の立場では仕方なかったんだなと共感してあげる幼い頃の自分の「健気さ」に気づく。そのとき感じていた気持ち、本当はどうしたかったのか?をわかってあげる
③大人の自分として行動する(行動)
大人の自分は、別の方法を選択できることを理解し行動してみる。選択してみて、どうなるかを味わう。
自分に癖があることを責めるのではなく、その癖がある理由を理解して共感してあげると、安心することができ、癖を手放しやすくなります。一人で気づくことが難しい場合は、安心できる人に話すと、自分の気持ちに気付きやすくなります。改善したい気持ちが強い場合は、カウンセラーに依頼することもおすすめです。(日本ではカウンセラーはメンタル的に弱っている人が相談するイメージがありますが、本来は身近な課題の解決にも有効な方法です)
コミュニケーションの課題は二人の問題
先ほどの「問題が起きた時にどちらが悪いのか?」という質問に戻ってみましょう。問題が起きるということは、(過失割合に偏りがあるにせよ)お互いの癖が影響しあって起きているということです。
先ほどの例でいえば、部下は「どうせ聞いてくれない。気持ちを伝えてもわかってくれない」と考えている一方、上司には「コントロールしておかなくては不安。自分がやらないと…」という考え方の癖があるのかもしれません。
相手にも、「考え方の癖ができる小さな頃の理由があったんだな」と思うと、少しだけ理解できるような気がしませんか?この上で、「私の癖はなんだろう」「変えられる行動はなんだろう」と考えられるようになると、一歩深い段階で、自分が変えられる行動を見つける、手がかりになっていくのです。
ブランド戦略コンサルタント/ 心理カウンセラー
佐野 由理
非営利事業のコンサルティングチーム、外資系戦略ファーム、広告代理店系デザインファームなど、幅広い領域にてブランド戦略を軸としてコンサルティング業務に従事。メーカー・ハイテク・運輸・小売等幅広い業種に携わり、企業のパーパス策定から戦略、マーケティングまでの一貫した支援を行う。
現在はフリーランスとして活動。ハードワークの中で心身を壊したのを機に、カウンセリングを学び、経営者や個人へのカウンセリングセッションの提供も並行して行なっている。ブランド戦略においても、コーチングやカウンセリングを取り入れ、深いインサイトを得るパーパス策定や個人のモチベーションを引き出す組織開発・ワークショップを実施。感性と論理の統合を大切にしている。