Work Style VISION 2024 を終えて
「チームで力を発揮する」ために
私たちは日々、他者との関係性の中で仕事をしています。その中で、自分の力を最大限に発揮し、仲間と共にビジョンを共有できているでしょうか?成果を上げるチーム作りには、「個人のスキルアップ」だけでなく、「関係性のバージョンアップ」が不可欠です。
2024年12月6日に開催された「Work Style VISION DAY2」では、チーム内の関係性をテーマにしたセッションが行われました。職場における個々のスキルや成果だけでなく、メンバー同士の結束力や信頼関係が、これからの働き方や組織の在り方を大きく左右することが強調されました。
本セッションでは、心理的安全性の確保、対話を通じた信頼構築、多様性を活かした協働の仕組みづくりなど、多くの組織で共通する課題とその解決策が議論されました。
この記事では、セッションの内容を振り返りながら、未来志向の組織づくりに向けたヒントをご紹介します。チームの関係性を進化させるために、ぜひ参考にしてください。
■株式会社ドコモ ビジネスソリューションズ 長野支店 岩崎支店長の取り組み
岩崎隆司さんは、2022年7月に長野支店へ赴任。異なる文化や業務を持つ3社が統合された中、60名の社員とエンゲージメントを築くために、1on1面談やチームビルディングを中心とした取り組みを進めてきました。
1on1で信頼関係を構築
岩崎さんは、社員一人ひとりの人柄や課題に向き合う1on1を実施。「どんなことでも話してほしい」というスタンスが信頼を築きました。また、社員の声に丁寧に耳を傾ける姿勢が、関係性を強化する鍵となりました。
チームビルディングと心理的安全性の向上
並行して行われた研修では、社員の強みを活かし、組織全体の活性化を図りました。この研修に参加した社員からは、「岩崎さんが信頼して任せてくれたおかげで、自信を持てるようになった」という声が寄せられました。こうした取り組みは、心理的安全性の向上につながり、社員が安心して新たな挑戦に踏み出せる文化を育む一助となっています。
成果を生む2つのポイント
岩崎さんの取り組みから浮かび上がる重要なポイントは以下の2つです。
1. 頻度の高いコミュニケーション
定期的な対話とフィードバックが信頼関係を築きます。
2. 質の高いコミュニケーション
変化に対応しながら、個々の意見に耳を傾ける姿勢が重要です。
「小さなことでも報告してほしい。責任は上司が取るから、安心して挑戦してほしい」という岩崎さんの言葉は、社員に安心感を与えています。
こうした信頼と挑戦の積み重ねが、強いチームを作る原動力となるのです。
■株式会社地元カンパニー 児玉社長の取り組み
続いて登壇したのは、株式会社地元カンパニーの児玉社長です。同社では、児玉社長の独自のスタイルによって、社員のエンゲージメントを高める取り組みが進められています。その取り組みの一つである「葛藤発表会」は、とてもユニークな方法として多くの共感を集めています。社員が最大限に能力を発揮するためには、失敗を恐れずに挑戦できる環境が欠かせません。そこで児玉社長は、社員同士が互いに協力し合える場として「葛藤発表会」を設けました。
悩みでも成果でもない「葛藤」を語る場
この取り組みでは、失敗や成果ではなく、「葛藤」にのみ焦点を当てます。社員は自分の葛藤を語り、それに対してアドバイスや解決策を求めるのではなく、ただ共感し合うことがルールとして徹底されています。この仕組みによって、社員同士の信頼関係が深まり、結果的に組織全体の意欲向上につながりました。課題や成果ではなく、迷いや揺らぎを共有することで新たな気づきとつながりを生み出す。このユニークな取り組みこそが、地元カンパニーの成長を支える大きな要因となっています。
地方企業の新人賞「ルーキー・オブ・ザ・イヤー2024」
地方で働き始めた若者の中には、成長を実感できなかったり、都会で働く友人と自分を比較して悩む人も少なくありません。そんな若者たちにとって、身近なロールモデルの存在が重要だという考えから生まれたのが「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」という取り組みです。
この新人賞は第1回目が宮崎県でスタートし、地元カンパニーはスポンサーとしてその活動をサポートしました。第2回目では長野県上田市で開催されるなど、取り組みは着実に広がっています。また、地元カンパニーは本大会に加えて長野県大会も主催し、その実行委員長を社内の若手社員(ルーキー)に任せました。結果として、素晴らしい大会を成功させることができたのです。
▼「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」の記事はこちらから参照できます。
https://note.com/jimotocompany/n/n54f20079c468
目指す世界は「待てる社会」
現代社会ではスピードが重視され、今日注文したものが翌日に届かないだけで不満を感じることさえあります。しかし、児玉社長は、こうした時代だからこそ「待つこと」の価値を見直すべきだと提唱しています。たとえば、春に注文したリンゴが冬に届く仕組みには、「待つ楽しみ」があります。この待つ時間が、生活に小さな期待や喜びをもたらし、不安定な状況下でも心の安定や幸福感を育むのではないでしょうか。
「待てる社会」を目指す児玉社長の取り組みには、人々への深い愛情と未来へのビジョンが込められています。スピードを追い求めるだけでなく、人間らしい豊かさや心のゆとりを取り戻すことこそ、現代社会に求められる新しい価値観と言えるでしょう。
葛藤発表会をやってみる【グループセッション】
トークセッションの後、参加者は4つのルームに分かれて「葛藤発表会」を体験しました。
私がファシリテーターを務めたDルームでは、各参加者が自らの葛藤を語り合い、その中で葛藤の奥に隠された価値観や想いが浮かび上がる瞬間が何度もあり、場の空気が共感で満たされました。
フィードバックを行う側も、自分自身の内省を深め、新たな気づきを得ることができました。このような体験を通じて、葛藤を共有することが、組織や個人の成長を促進する可能性を改めて実感しました。
「葛藤発表会」は、人と人とのつながりや働くことの本質を再考する大きなきっかけとなる取り組みであることを強く感じました。
組織のエンゲージメント向上は、一人ひとりの小さな一歩から
組織のエンゲージメントを向上させるには時間がかかると感じる方も多いかもしれません。しかし、実際には、一人ひとりの小さな一歩が大きな変化を生み出す可能性を秘めています。
今回のイベントでは、ゲストが試行錯誤を重ねて成果を生み出した事例が紹介されました。ゼロからのスタートであっても、諦めずに前進し続けることで、組織や個人に変化をもたらすことができるということが示されました。
MITのダニエル・キム博士が提唱する「成功循環モデル」では、組織の成長は「関係の質」から始まるとされています。良い関係性が良い思考を育み、行動を変え、やがて成果につながります。このプロセスの土台となるのがコミュニケーションです。
そのため、まずは小さな一歩を踏み出すことが重要です。たとえば、同僚に声をかける、感謝の気持ちを伝える、新しいアイデアを共有するなど、些細な行動が信頼を生み、エンゲージメントを高めるきっかけとなります。「千里の道も一歩から」。まずは身近なところから始めてみませんか?