日々、描いたり泣いたり笑ったり #13 [引きこもりなのにコロナになった 後編]
みなさんこんにちは!
3月も下旬に差し掛かり、年度末で忙しく過ごしている方も多いのでは。コロナ闘病記を病床で書いていたことも、2ヶ月が経とうとしている今は遠い過去の話。思いもよらなかった彼の国での戦争や、自然災害など日々目まぐるしく世界は変化しています。
すでに記憶の彼方な部分も多い『引きこもりなのにコロナになった』ですが、後遺症などを含めて今現在に至るまでを書いていこうと思います。もうしばらくお付き合いくださいね。
入院生活での新習慣
普段は遅寝遅起きの私ですが、そうはいかない入院生活。朝の6時に一斉コールで起き、決められた時間に3度の食事と5度の検温等チェック、21時には消灯というルーティーンでした。
「みなさん、どうやって過ごしたらいいか分からないって言われるわ」と看護師さんから聞きましたが、私の場合は絵を描いたりYouTubeを観たりSNS投稿をしたり、力尽きて眠ったり。そうそう、私の病室は6階でとても景色が綺麗だったので、SNSネタとして定点撮影もしていました。
普段視界に入ってくる世界が一変して、テレビを普段見ない私が朝ドラにはまったり、食事の絵記録をiPadで描いたりすることは、脳に新しい刺激を与えたように思います。旅行をしたり引越しをしたりすることは、自分の凝り固まった思考がシャッフルされてとても良いことらしいけど、まさか入院でそれを味わうとは思ってもいなかったな笑
入院中でも待ってはくれない、お仕事事情
ほぼゴロゴロと寝ていた私にも、喫緊にやらねばいけない仕事がありました。我らBiotopeのフリペ表紙案!
提出期限をギリギリまで待ってもらったラフ案でしたが、退院まで待つことはできなかったので病床で描きました。
熱が下がれば結構元気でいたつもりだったし、ラフ案くらい描けるだろうと思っていたのですが…テーブルにスケッチブックを広げてペンを持っても、どうも体がフラフラと揺れる。少し休もうと横になるとずっと眠るということの繰り返しでした。
普段から寝太郎の私も、さすがにこれは病気のせい!?と主治医に伝えると「眠れないよりいいよー」とあっさり返されたのはちょっと寂しかった笑
ラフ案は入院7日目に一気に描いて提出。一応期限には間に合って、この3月には春号が出ました!私にとっては忘れることのできない号だな〜。
いよいよ退院、なんとその日が個展初日。
実は退院日の2月4日は私の個展のレセプション(招待客を招いて、ささやかなパーティーをしながらのお披露目会)だったのです。退院は11時半。レセプションは18時スタート。額装もできていなければ、搬入は今からという綱渡り状態でした。でもその日は私がロゴを制作したブランドのお披露目会でもあったので、春がスタートする「立春」にどうしてもお祝いしたい気持ちがあったんです。
運命は信じている方で、直前にちゃんと退院できるのは、やり遂げろということだろう!とフラフラ状態で準備。事前にバイトをお願いしていた人たちのおかげもあって、無事に開催できました。というか、全然間に合ってなかったけど、気を遣ってお客様同士で談笑をして待ってくれていた。ありがとうございます…!
翌日からの個展本番もたくさんのお客様にお越しいただき、無事に終了することができました。
さすがに2週間ずっと寝ていた体で急に長時間立ちっぱなしの接客はしんどかったけど、達成感は凄まじかったです。限られた時間と力でしたが、フォローしてくださった人たちや、「彩ちゃん、頑張ってこられ!」と送り出してくださった看護師さんたち(退院する頃には仲良しになっていた笑)、ご来場くださったお客様方から、温かなものをたくさん受け取ったように思います。
ありがとうコロナ
その後体は徐々に回復し…というか、入院2週間では完全に元気になれた訳ではなかったです。私の場合は、気管がヒューヒューすることと、お腹が少しゆるいこと、コーヒーなどの刺激物を口にしたくないことが1ヶ月は続いたように思います。忙しくしていたら何となく治っていたなという感じ。今ではすっかり元気です。
振り返れば結構辛かったコロナですが、「ありがとうコロナ」というのは実は心の底から思っています。
亡くなった方もいるのにとか、医療関係者は大変なのにという非難を恐れず言いたいのは、「何事も人生は経験から」ということ。もちろん感染しないほうが良いに決まっているし、ちゃんと予防はしているのですが、かからなければ分からなかったことがたくさんありました。
コロナによって大きく変化せざるを得ないことが、世界中で同時に起こりましたよね。「ああどうしよう、大変だ!」と一斉に私たちがエネルギーを注いで変化させたことは、負の部分だけではないはずです。
私たちは自然の一部にすぎませんから、自然災害や今回のような伝染病を含めて、人間の思い通りに動かすことはできません。災難が降りかかったときに、自分はどういった心持ちでいようか、その選択ひとつで見える世界は良いことにも悪いことにもひっくり返るのだと考えさせられた機会でした。
ありがとうコロナ。でも2度はもういいや。早く弱毒化してよね!
〈おまけ〉
画家
関口 彩
画家。富山県出身在住。
会社員のかたわら絵画制作をはじめ、2017年より画業に専念する。 作品は、動植物や石など自然のものを独自の視点で切り取り、細やかな筆使いで描くのが特徴。 装画、パッケージなどのクライアントワークを手がける他、作品発表を各地で行う。